障害者手帳の最大のメリット! 障害者控除で大幅節税

精神障害者保健福祉手帳(以下「障害者手帳」)を取得すると経済的なメリットが色々ありますが、多くの人にとって、最大のメリットは税金が安くなるということだと思います。

どの程度安くなるかは、本人あるいは扶養してくれている家族の収入によりますが、手帳を持つ本人が専業主婦で夫が平均的な所得の場合、年間で5万円以上も税金が安くなるのです!

「障害者手帳を申請するのが面倒だから…」と迷っている方、頑張って申請してみてはいかがでしょうか。

障害者控除とは?

所得税(国税)には「障害者控除」というのがあります。

簡単にいうと、障害者(障害者手帳を交付されている人)本人と、その人を扶養している親族について、27万円(障害の程度や同居の状況によっては40万円あるいは75万円)の所得控除を受けられる、というものです。

正確な情報は以下をお読みください。

No.1160 障害者控除(国税庁 タックスアンサー)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1160.htm

 

また、住民税にも(おそらく全ての自治体に)同様の制度があります。

たとえば東京都新宿区では、26万円(場合により30万円あるいは53万円)の所得控除を受けることができます(おそらく、ほとんどの自治体で同額です)。

住民税の障害者控除・非課税(新宿区)
http://www.city.shinjuku.lg.jp/fukushi/file06_04_00058.html

 

控除額が増額されるのは、精神障害者保健福祉手帳の1級を交付されている場合です(「特別障害者」という扱いになります)。

1級はなかなか該当する人がいないかもしれませんが、2級や3級でも、所得税、住民税でそれぞれ27万円、26万円もの控除を受けられます。

所得控除って何?

よくあるのが「27万円も税金が安くなるの!」という誤解です。

残念ながら、そこまで安くはなりません。

27万円は「所得控除」ですから、「課税対象となる所得額」が27万円安くなるのです。

簡単にいえば、稼ぎが27万円少なかったということにして、税金を計算してくれるということです。

 

せっかくなので、「所得」という用語について正しく理解しておきましょう。

「所得」というと、何となく「収入」と同義語のように思っていませんか?

正確に言うと、「所得」とは、「収入」(会社員の場合「給料」)から、各種の控除額を差し引いたものです。
ここでいう控除額というのは、収入を得るための必要経費という位置付けです。

お店に例えれば、「収入」は売り上げで、そこから商品の仕入れ代金や従業員の人件費を差し引いて手元に残ったお金(儲け)が「所得」というイメージです。

 

障害者控除は、「障害者なんだから普通の人より生きていくのにお金がかかりますよね」ということで、年27万円を必要経費として認めてくれる、という言い方もできます。

結局、いくら安くなるの?

じゃあ結局、税金はいくら安くなるんだよ!と思った方。

正確な答えは「人それぞれ」です。

所得税の税率は所得によって違う

所得税は所得の額(≓収入)により税率が異なるので、一概にはいえません。

以下、標準的なサラリーマンの場合で考えます。

 

中間所得層の所得税は「所得の10%-97500円」で計算されます(復興特別所得税は少額なので無視します)。

つまり、所得が10万円増えれば(≓収入が10万円増えれば)、税金が(10万円×10%=)1万円増えるということです。

27万円の障害者控除というのは、「あなたは障害者なので(あるいは障害者を養っているので)、所得が実際より27万円少なかったことにしてあげます」ということでした。

結果として、所得税が27万円×10%=27000円安くなります

 

稼ぎのいい人なら、税率が10%ではなく20%となり、所得税は54000円安くなります(もっと稼ぎのいい人は…自分で計算してください)。

住民税は一律10%

住民税も考え方は同様ですが、税率が所得税と違います。

住民税の所得割は一律10%です(これと異なる税率の自治体もありますが稀です)。

したがって、障害者控除により住民税は一律26000円安くなります
(そもそもの住民税額が極端に少ない場合はこの限りではありません。)

全部でいくら安くなる?

以上のとおり、障害者控除で所得税も住民税も安くなります。

私たちの場合は所得税10%、住民税10%なので、年間53000円も税金が安くなる計算になります。

毎月に均すと5000円弱なので、給与明細でこの差額を実感できるかというと微妙ですが、少ない額ではないですよね。

障害者控除を受ける方法 (1) 年末調整

しかし!

障害者手帳を交付されても、自動的に障害者控除を受けられるわけではありません。
手続きが必要です。

一般的には確定申告を行うことになりますが、会社勤めの方は年末調整でも対応可能です。

会社勤めなら年末調整が楽、ですが…

会社員の方だと、11月ごろに税金関係の書類を配られ、必要事項を記入した上で会社に提出していると思います。

これが「年末調整」です。

 

配られる紙の中に、家族の状況をいろいろ記入する欄があると思います。

この中に「障害者 何名」と書く欄があるはずです。

ここでいう「障害者」とは「障害者手帳を持っている人」という意味です(他の条件で障害者と認定される場合もありますが)。

ご自身、あるいは税法上の扶養家族が障害者手帳を持っていれば、ここに人数を記入します。

また備考欄には、障害者手帳の種類や番号、交付日を記入します。

これで手続きは完了です。

 

所得税の減税分は、年末の給与と一緒に返還されます。

また住民税については、翌年6月ごろから向こう1年間の給料天引き分が軽減されます。

 

会社に提出するだけだから、手続きはほんとうに楽ですよね!
障害者控除がなくても年末調整は必要ですから、手間はほとんど増えません。

会社の人に障害者手帳を見せないといけない!?

気になるのは、障害者手帳を会社の担当者に見せる必要があるのか?ということです。

結論からいうと、国のルール上は、手帳のコピーを添付したり、手帳の現物を提示したりする必要はありません

ところが会社の担当者によっては、障害者手帳を見せろ!と言ってくることもあるそうです。
ちなみに私たちは一度も言われていません。

 

ただ、手帳を見せないにしても、手帳の種類や番号を記入するのですから、会社の担当者には、自分あるいは家族が精神障害者であるということがバレてしまいます

担当者の「口の堅さ」に期待したいところではありますが…

障害者控除を受ける方法 (2) 年末調整

年末調整で障害者手帳のことを書きたくない方。
また、年末調整という仕組みがない環境の方。

こういう方は確定申告をすることになります。

手帳をもらったばかりの方、制度を知らなかった方も!

加えて、手帳をもらった時点ですでに年末調整が終わっていたという方は、12月31日時点で手帳が交付されていたのであれば、その年から障害者控除が適用されますので、確定申告で対応するしかありません。

 

さらに言えば、本記事を読んで「やべー、今まで障害者控除を知らずに大損してた!」と思った方は、還付申告によって5年分は遡って税金を返してもらえます

還付申告は、簡単にいえば「確定申告のうち、申告すれば税金を返してもらえる場合」なのですが、狭い意味での確定申告(申告により税金を支払う場合)と違い、1年中いつでも申告可能です
たとえば2015年に障害者手帳を交付された方は、2016年1月1日から5年間、すなわち2020年末までの間に還付申告すれば税金が戻ってきます。

 

税理士などに相談するまでもなく、税務署に相談すれば、無料でやり方を教えてもらえます。
過去の源泉徴収票など、書類を準備する必要があるとは思いますが、リターンの大きさを考えれば、チャレンジしてみる価値はあるでしょう。

収入がない人はそもそも不要

では、重い腰を上げて確定申告(還付申告)してみようかな、と思った方。

念のための補足ですが、誤解しないでいただきたいのは、あくまで所得税・住民税あっての障害者控除だということです。

給付金ではなく「税の軽減」ですので、納税していないのであれば、障害者控除で返ってくる税金もないということです。

 

専業主婦で収入がほとんどなければ、所得税も住民税も0円ということになりますよね。

このような場合には、そもそも還付される税金がないので、その人本人としては確定申告は不要(無意味)です。

ただし、その人を扶養している家族に、所得税や住民税が課税されるだけの所得があれば、確定申告によって障害者控除を受けることができます。

医療費控除と一緒なら、手間は増えない

確定申告は、慣れないと難しい印象がありますし、(支払うべき税金がある場合には)期間内に税務署へ書類を提出しないといけないので、面倒です。

ただ、障害者手帳をお持ちの方は医療費もそれなりにかさむので、医療費控除のために毎年確定申告しているという場合が多いのではないかと想像します。

そうであれば、手間はほとんど増えません。

 

医療費控除などですでに申告書を準備しているなら、記入方法は意外と簡単です。

まず、申告用紙「第一表」の「勤労学生、障害者控除」の欄に、控除額(通常27万円、特別障害者なら40万円あるいは75万円)を書きます

次に「第二表」に移り、「障害者控除」の欄に、障害者手帳を交付されている人の名前を記入します。

これで終わりです。
手帳の種類や番号などは書かなくて大丈夫です。
また、申告時に手帳のコピーを添付するような必要もありません。

 

国税庁のホームページに「確定申告書等作成コーナー」というのがあり、これを利用するとさらに簡単に作成できます。

確定申告書等作成コーナー(国税庁)
https://www.keisan.nta.go.jp/

会社にはバレないか?

この方法であれば、会社の担当者に「障害者控除を受けている」ということがバレにくくなります

強いていえば、住民税について、住所地の自治体から会社へ通知がいくので、それを注意深く見ていれば、障害者控除の適用を知ることはできるかもしれません。

ただ、手帳の種類が書いてあるわけではないので、ぱっと見には目立たず、興味本位で全員の書類をパラパラ眺めているだけの担当者なら、印象に残らないだろうと思います。

まとめ:障害者手帳、持ってるだけじゃもったいない!

以上、障害者手帳を持っていると、障害者控除で税金が安くなるという話でした。

 

診断書を用意するなど、障害者手帳の申請には苦労が伴いますが、一般的な世帯で年間で5万円以上という経済的メリットを考えれば、苦労する甲斐もあるというもの。

また、障害者手帳を入手したのに障害者控除を受けていないという方は、過去5年分を取り戻すことも可能です

 

年末調整なら手間はほとんどかかりませんし、人目を気にするなら確定申告(還付申告)で税務署に直接提出という手もあります。

ご家族などの協力を得ながら、ぜひチャレンジしてみてください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました