精神障害者保健福祉手帳を持つメリットは?デメリットはあるの?

妻が精神科に通い始めた当初、本人も夫も「精神障害者保健福祉手帳」(以下「障害者手帳」)というものの存在を知りませんでした。

「精神障害者に対して何か援助はないのか」と調べていたところ、障害者手帳というものがある、ということを知りました。

申請はそれほど難しくなく、審査もそこまで厳しいものではないと思いますが、手帳があるのとないのとでは、経済的に相当大きな差が出てきます

このページでは、「障害者手帳初心者」の方に向けて、障害者手帳を取得することのメリット、デメリットをご紹介していきます。

障害者手帳の意義とは?

そもそも、障害者手帳を持つことの意味は何でしょうか。

私たちが思うに、この手帳の意義は、「精神的な症状で苦労しています」ということを客観的に示し、いろいろな援助を得やすくする、ということでしょう。

精神障害は目に見えない

身体障害と違い、精神障害は一見しても分からない場合がほとんどです。それゆえに援助を得にくいということもあるでしょう。
しかし実際には、精神的な症状ゆえに日々の生活は困難です。

そこで、手帳の申請時に症状を見極めてもらい、ひとたび認定を受ければ、あとは手帳の呈示だけで「生活の困難さ」を分かってもらえるようにする――それが障害者手帳の根本的な存在理由だと思うのです。

昔は写真がなかった

私たちが手帳を入手したのは2011年のことで、当初から本人の顔写真入りでした。
が、一昔前までは、あえて手帳に写真を貼り付けていなかったと聞きます。精神障害に対する偏見を考慮しての措置だったようです。

しかし、これにはデメリットもありました。写真がないので「手帳を持っている人が障害者本人かどうか」ということを確認できず、そのことで身体障害者よりも受けられるサービスが少なかったのです。
たとえば、JRの運賃は重度の身体障害者に対し割引がありますが、精神障害者保健福祉手帳では、最も重度の1級でも割引になりません。移動困難の度合いの違いも理由の一つでしょうが、かつて写真がなかったということも影響しているように思います。

今では精神障害者保健福祉手帳も写真入りとなり、これによりサービスの幅も徐々に広がりつつあります。

メリットは、要するに「カネ」

では、障害者手帳にどういったメリットがあるのでしょうか? 一言でいえば「カネ」です。
つまり、障害者手帳を持っていることで、様々な経済的優遇を受けられるのです。実に分かりやすい!

たとえばこんな特典が

個別の優遇についてはページを改めて詳しく説明していきますが、主なもの紹介します。

まず、多くの人に該当し、かつ金銭的メリットも大きいのが税の優遇です。収入にもよりますが、典型的には年間5万円程度の減税を期待できます
障害者手帳を持っていると、税金の計算上「障害者」という扱いになり、所得税(国税)においては27万円、住民税においては26万円の所得控除(障害者控除)を受けられます。1級であれば「特別障害者」という扱いになり、さらに控除額は大きくなります。
障害者自身に収入がなく、誰かに扶養されている場合、その「扶養している人」にの税金に対しても障害者控除が適用されます。
中間所得層を想定し、所得税率が1割、住民税率が1割と考えると、年間で2.7+2.6=5.3万円の減税となります。これは大きい!

その他は細々したものですが、東京都であれば「都営交通無料」「路線バス半額」「タクシー1割引」といった交通費の援助を受けられますし、携帯電話の基本料金や文化施設の入場料も安くなります。また自治体によってはタクシー券の配付、粗大ゴミの回収費減免など、意外な援助があります。

デメリットはあるのか?

最後に、障害者手帳を取得することによるデメリットはあるのか?ということですが、「面倒だ」ということぐらいしか思いつきません。あと、強いて言えば「他人の目」でしょうか。

手間とコストがかかる→ぜひ他人の助けを!

まずは、障害者手帳を入手するのに相応の手間とコストがかかるということがデメリットとして挙げられます。

新規であれ更新であれ、障害者手帳を申請するとなると原則として診断書が必要です。この診断書は精神科の主治医に書いてもらうことになります。この診断書を市役所に持ち込んで手帳を申請します。

診断書の用紙は都道府県によってはインターネットでも配付していますし、精神科の先生も手慣れたものだとは思います。そこまでハードルの高い手続きではありません。
が、その「簡単と思われがちなこと」ができないのが精神障害なんですよね。我が家の場合も、患者本人である妻が手続きを行ったことはほとんどなく、夫がお膳立てするなり役所に書類を持ち込むなりして対応してきました。

患者の家族の方、これをお読みでしたら、ぜひ、手続きの一部を肩代わりしてあげてください。障害者手帳は2年更新なので、同じ作業が2年おきに発生しますが、それによって得られる経済的なメリットは相当なものです。

他人の目が気になる?→自宅保管でもメリットあり

あとは、障害者手帳を持つことで、他人から「あの人は精神障害者だ」と思われるのが辛い、ということがあるかもしれません。

東京都の場合、障害者手帳のカバーには単に「障害者手帳」と書いてあるだけで、「精神」の文字はありません。手帳のことを知らなければ、ぱっと見、何の障害だか分からないようにはなっています。

でもやっぱり、人前で障害者手帳を出すことには抵抗がある――そんな方もいらっしゃるかもしれません。
もしそうであれば、手帳を家に置きっ放しにするという選択もあります

障害者手帳の、おそらく最大のメリットは税金の障害者控除です。これは日々、手帳を持ち歩かなくても享受できます。年末調整や確定申告の用紙に障害者手帳の番号などを記入するだけです。手帳のコピーを添付するような手続きすら不要です(少なくとも税務署では)。

まとめ

以上、精神障害者保健福祉手帳(障害者手帳)のメリット、デメリットについてまとめてみました。

精神を病んでいれば経済的に疲弊します。障害者手帳は、そんな人が経済的な援助を受けるためのパスポートのようなものです。
手帳の申請手続きというハードルはありますが、2年に1回のこの壁を乗り越えれば、金銭的に結構な節約となります。

まだお持ちでない方、誰かの手を借りてでも、申請してみることをおすすめします。

コメント

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