障害者手帳と一緒に考えたい! 自立支援医療で医療費補助を受けよう

いわゆる難病の患者に対しては、国や都道府県が医療費を助成する「難病医療費助成制度」があります。
私たちの場合、全身性エリテマトーデス(SLE)でこの制度を利用できています。

一方、治すのが難しいという意味では、うつ病や双極性障害も立派な難病だと思います。

しかし、これらの精神的症状は「難病医療費助成制度」の対象にはなっていません

 

その代わり、別の枠組みとして「自立支援医療(精神通院医療)」という医療費補助制度があります

この自立支援医療(精神通院医療)について、本ページで紹介します。

 

自立支援医療(精神通院医療)は、精神障害者保健福祉手帳との親和性が高い制度です。
手帳を持っていれば自立支援医療の申請を、自立支援医療を受けていれば障害者手帳の申請を検討すべきです。

 

なお、私たちのように「難病に関連して精神症状を発症した」という併発の場合には、精神症状についても難病医療費助成制度の対象となることがあります

このような場合には、どちらの制度がよりおトクなのか、見極めが必要です。

自立支援医療(精神通院医療)の対象は?

自立支援医療(精神通院医療)とは、精神障害(てんかんを含む)の治療のために継続的に通院治療が必要な人について、医療費の自己負担を軽減するという制度です。

対象となる病気は広範囲

具体的には、厚生労働省の資料によると以下のような疾患が対象となっています。素人が端折って書いていますので、詳しくはオリジナルの資料をご覧ください。

  • 統合失調症
  • うつ病、躁うつ病(双極性障害)
  • 薬物中毒や依存症
  • PTSD、パニック障害
  • 知的障害、心理的発達の障害
  • 認知症
  • てんかん

出典:自立支援医療(精神通院医療)について(厚生労働省)

 

双極性障害を始め、うつ病、統合失調症など、いわゆるメンタルヘルス関連はおおむね含まれています。

病名を見ると、精神障害者保健福祉手帳(いわゆる障害者手帳)の対象と大部分が「かぶる」ように思えます。

しかし、制度としては障害者手帳とは別です
障害者手帳を持っているから医療費も自動的に安くなるということはありません

 

ただし、障害者手帳と自立支援医療の申請を同時にすれば、手間はだいぶ軽減されます
詳しくは後述します。

医療費の補助が受けられるのは「通院+投薬」

上記の疾患のためにかかる医療費のうち、ざっくりいえば「健康保険が適用になる治療費」が自立支援医療(精神通院医療)の補助対象になります

通院して薬を処方されれば、その薬代も対象になります。

デイ・ケアや訪問看護等も対象になるそうですが、これは主に認知症関連でしょうか。

 

注意したいのは、入院費は対象外ということです。
「精神通院医療」とありますから仕方ないのですが、症状がひどければ入院もあり得るだけに、制度として不十分な気もします。

また、健康保険の対象にならないカウンセリング等も対象外です。

医療費負担が1割に! ただし所得制限あり

自立支援医療(精神通院医療)を利用すると、どの程度医療費が安くなるのでしょうか?

基本は1割負担

通常、健康保険を利用して通院すると、負担額は医療費の3割(場合によっては2割)です。

これが、自立支援医療(精神通院医療)を利用すると1割の負担で済みます

3割負担の人でいえば、医者代と薬代が3分の1になるということです。これは大きい!

所得に応じて援助額が変わる

ただし、世帯の所得(患者本人の所得ではない)が一定以上である場合、この「1割負担」の対象外となります。

具体的には、市町村民税の額が235000円以上の世帯は、1割負担という特典を受けられなくなります

 

ここで、判断基準が「住民税額」ではなく「市町村民税額」であることに注意してください。(医療関係者でも誤解している人がいます!)

通常、住民税(所得割)の税率は所得に対し10%で、このうち6%が市町村民税(23区では特別区民税)、4%が道府県民税(東京都では都民税)です。

「6%」の方の税額が235000円以下であればよいので、住民税全体としてはおおむね39万円以下であればOKです。

給与から住民税が天引きされている方であれば、月々の住民税額がおおむね32500円以下であればセーフ、ということになります。

 

一方で、所得が低ければ月々の自己負担額に上限が設けられます。
つまり一定以上の医療費を支払わなくてもよくなります

詳しくは前述の厚生労働省の資料をご覧ください。

「重度かつ継続」なら上限あり

高所得者もガッカリしないでください。

症状が「重度かつ継続」に該当する場合には、高所得者を含めて支援の対象となります!
月々の医療費の上限額も設けられます。

 

「重度かつ継続」に認定されるためには、健康保険の「多数回該当」であるか、特定の症状に該当する必要があります。

このうち「特定の症状」については、統合失調症、躁うつ病、うつ病、てんかん、認知症等の脳機能障害、薬物関連障害(依存症等)、その他(経験ある医師の判断による)が該当するとされています。

「重度」と聞くと「自分はそこまででもないか…」と思いがちですが、患者数の多い「うつ病」も「重度」に含まれていることから、意外と多くの方が「重度かつ継続」に該当するのではないかと思います。

補足:多数回該当について

「多数回該当」はちょっと難しいのですが、健康保険の高額療養費を年に3回以上支給される場合がこれに該当します。

――言い換えても難しいままでした!

ざっくりいえば、月の医療費(健康保険適用分の自己負担額)が10万円近くになることが、年に3回(12ヶ月のうち3ヶ月)以上ある場合、と考えてください。

実際に高額療養費が支給されると、治療を受けた数ヶ月後に手紙が来て、上限を超えた医療費が返金されるはずです。
こういう経験を年に3度以上した、という方は該当します。

精神疾患でこれほど高額になることは、入院でもしなければ稀ではないかと思いますが、他の疾患(たとえばSLE)のために医療費が高額になった場合も該当するようです。

また、同じ健康保険に加入している別の家族の医療費も合算できる場合がありますので、一応、心に留めておきましょう。

自立支援医療(精神通院医療)の申請方法は?

自分の病気は自立支援医療(精神通院医療)に該当するのでは?と思った方。

次はいよいよ申請です。

 

自立支援医療(精神通院医療)の申請は、お住まいの市町村に対して行います

このとき必要な書類はいくつかありますが、準備に苦労するのは診断書です
通院している精神科の先生に書いてもらうことが基本になります。

診断書の作成は一般的に有料ですし、頼んですぐに受け取れるとも思えませんから、手間も時間もかかります。
仕方がないとはいえ、ここが一番のネックだなと感じます。
用紙を準備して主治医に頼むだけですが、その「だけ」が、実に重いのですよね。

 

診断書などの申請用紙そのものは、お住まいの市町村の役場で入手できます。
都道府県によってはネット上で入手して自宅のプリンタで印刷することもできますので、調べてみてください。
東京都の場合は以下のページにあります。

自立支援医療(精神通院)の手続き(東京都福祉保健局)
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/smph/chusou/tetuzuki/tetuzuki.html

障害者手帳との同時申請がおすすめ!

さて、診断書といえば、精神障害者保健福祉手帳の申請でも診断書が必要ですよね。

実は、障害者手帳と自立支援医療で、診断書を共用することができます!
障害者手帳の診断書があれば、自立支援医療(精神通院医療)の申請にもそれを流用できることになっているのです。

ただし、前述の「重度かつ継続」として申請する場合には、別途、医師の意見書が必要な場合があります。

親切な役場の方であれば、障害者手帳を申請あるいは更新する際に「自立支援医療の申請はよろしいですか?」と尋ねてくれることもあるでしょう。

すでに障害者手帳を持っている場合は?

すでに障害者手帳を持っていて、あとから自立支援医療(精神通院医療)の新規申請をする場合には、診断書の提出を省略できる場合があります

これには「障害者手帳が、診断書に基づいて発行されていること」が必要です。

 

え? 診断書なしで障害者手帳がもらえるの?と思われた方もいると思います。

障害者手帳は診断書をもとに発行されるのが基本です。
しかし障害年金を受けている場合、診断書なしで障害者手帳が発行されます

このように、障害年金受給を理由として発行された障害者手帳では、自立支援医療(精神通院医療)の申請時に診断書を省略できないということです。

障害者手帳と更新タイミングを合わせられる

以上のように、障害者手帳と自立支援医療(精神通院医療)は、申請書類が一部共通のため、手続きはできる限り同時にしたいところです。

これを支援する仕組みとして、自立支援医療(精神通院医療)の認定期間をわざわざ短縮する制度があります

 

自立支援医療(精神通院医療)の認定期間は通常1年で、1年ごとに更新手続きが必要です。

一方、精神障害者保健福祉手帳は、通常2年ごとに更新手続きが必要です。

障害者手帳を先に取得し、あとから自立支援医療(精神通院医療)を申請する場合、両者の更新時期はどうしてもずれてしまいますよね。

 

そこで、障害者手帳の有効期限が1年未満である場合、「認定期間短縮にかかわる承諾書」というものを提出すると、自立支援医療(精神通院医療)の認定期限を障害者手帳に合わせてくれます

次回、障害者手帳の更新時に自立支援医療(精神通院医療)の更新手続きもでき、以後は必ず更新タイミングが揃うことになります。

 

ただ、先に自立支援医療(精神通院医療)の認定を受け、後から障害者手帳の申請をする場合、このような配慮があるのかは分かりません。

障害者手帳の申請が通り、次の次の自立支援医療(精神通院医療)の更新時に、「認定期間短縮にかかわる承諾書」を出せばよいのですかね。

そして、私たちの選択

以上のように、申請すれば医療費が3分の1で済むという自立支援医療(精神通院医療)。

利用できるからには利用したいところですが、実は、私たちは利用していません

併発なら、別の制度も利用できる

私たちの場合、SLEに対して難病医療費助成を受けています。
そして、双極性障害については「SLEに関連した症状の可能性がある」という扱いです。

このため、双極性障害に対しても難病医療費助成を受けられています

 

レアケースのようにも思えますが、SLEと精神の合併症状はそれほど珍しくないようです。

またSLEに限らず、主要な病院の精神科には「リエゾン」という分野があり、「身体の治療を行う過程で起こる精神症状」を対象とした治療体制が組まれています。

難病と自立支援、どちらがおトク?

難病医療費助成は自己負担額が2割なので、単純に考えれば自立支援医療(自己負担1割)よりも高額になります。

しかし私たちの場合、難病医療費助成の自己負担額の上限が月1万円です。

自立支援医療の上限額と変わらない?
いえ、SLEと双極性障害を合算した上限が1万円、というところがミソなのです。

同じ月にSLEと双極性障害の両方で受診すると、薬代を含めて1万円を若干超えるので、双極性障害の治療費が実質タダに近くなるのです。

ただ、双極性障害だけ受診する月もあり、こうした月に関しては自立支援医療(精神通院医療)より1割分だけ損をします。

 

自立支援医療(精神通院医療)も申し込んでおいて、「SLEの外来がある月は難病、ない月は自立支援」と使い分けることも一時考えましたが、ルール上こういうことOKかは不明です。

また、月ごとに適用する制度を変えるというのも煩わしいものです。
そんなところまで気が回るなら苦労しません。

さらに言えば、自立支援医療(精神通院医療)は1年ごとに更新手続きが必要で、そのたびに診断書の入手と役場への提出が必要になってきます。
面倒ですし、診断書代も余計にかかります。

 

以上をふまえ、我が家では難病医療費助成を利用して双極性障害の治療を行っています。

 

このあたりは各個人の所得や通院頻度、医療費の総額などによって選択が変わってきます。

もし、身近に計算の得意な人がいれば、「どっちがおトク?」と尋ねてみてもよいでしょう。

まとめ:障害者手帳とあわせて検討を

以上、自立支援医療(精神通院医療)について紹介してきました。

これに限らず、医療費助成の手続きは面倒です。
制度に詳しい人が身近にいればよいのですが、そうでない場合、役場で話を聞いてみるのが確実です。

 

また、自立支援医療(精神通院医療)は、精神障害者保健福祉手帳との併用が一般的です。

治療期間が長くなってきたら、障害者手帳のほうも検討しましょう。

障害者手帳については関連記事がありますので、どうぞご覧ください。

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